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企業競争力を高める知財ミックス戦略

第1回 「知財ミックス」の重要性

知財ミックスとは、特許・意匠・商標など複数の知的財産権を組み合わせ、事業の競争力向上に活用する考え方です。

企業の知的財産戦略には様々なものがありますが、多くの企業ではまず特許による権利化を思い浮かべると思います。しかし、技術分野や業界などによって一概には言えませんが、市場環境や商品開発のスピードが大きく変化する中、特許だけで優位に立ち、自社の競争力を守ることは難しくなってきています。

近年の製品は、技術そのものだけでなく、特にB to Cではデザイン性やブランド価値が購買行動に大きく影響しています。また、BtoB分野においても、技術性能だけでなく、操作性や機能的な形態、ブランドへの信頼などが採用判断に影響するケースがあります。さらにEC市場の拡大に伴い、模倣品や類似品が従来よりも広範囲に流通するリスクが高まっています。

こうした環境変化に対応するため、注目されているのが「知財ミックス」です。知財ミックスは「権利を増やすこと」が目的ではなく、「競合他社が模倣しにくい事業構造をつくること」が目的です。

例えば、

技術は特許で守る

外観デザインは意匠で守る

ブランドは商標で守る

というように、多面的な保護体制を構築します。各法域には向き不向きなどがありますので、相互に補完し合うことで、自社製品を効果的に守る効果が期待できます。

具体的な例で言えば、商品を包装するパッケージには、様々な材質や形状のものがあります。例えば、紙製の包装箱は、水分を吸収すると強度が低下し、形状を維持しにくくなるという課題があります。この課題を解決するために、紙に繊維樹脂を含有させることによって耐水性を強化することが可能な発明が生まれれば、当然、特許で権利化を図れば良いということになります。特許で権利化できれば、内容にもよりますが形状を問わない権利とすることも可能になります。

一方、耐水性の向上だけでなく形状にも工夫を凝らし、見た目で他社製品との差別化につながる特徴的な形状も兼ね備えた箱を実現した場合、耐水性に優れた特許で権利化を行っていても、見た目が似ていて耐水性を備えない包装用箱については、特許では十分にカバーできない可能性があります。

そのような場合に、特徴的な包装用箱の形状について意匠で権利化することができれば、意匠は商品の視覚的特徴に基づいて保護が行われるため、材質が異なっても外観が類似していれば保護対象となる場合があります。そのため、耐水性を備えない見た目が似ている包装用箱を第三者が実施しても、登録した意匠と類似している包装用箱であれば、その実施を阻止(意匠権に基づく権利を行使)することが可能となります。

また、包装用箱の名称やブランドロゴを商標として保護することで、技術・デザイン・ブランドの三方向から競争優位性を構築することも可能です。

このように、特許だけではカバーしきれないといった場合に、複数の知的財産権で相互補完し合う(多面的な保護体制を構築する)ことが、知財ミックスと一般的には考えられています。

企業の知財力とは、単に権利取得件数の多さではありません。事業戦略に沿った知的財産を適切に取得し、それらを組み合わせながら市場での競争優位を維持することこそが重要です。
知財ミックスは、権利を増やすための手法ではなく、模倣されにくい事業基盤を構築し、企業競争力を高めるための戦略的な考え方といえるでしょう。

今後の連載では、特許・意匠・商標をどのように組み合わせれば事業価値の向上につながるのか、具体例を交えながら紹介していきます。

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